フランス〈デモ〉の理由とは?燃料税増税抗議デモが激化する理由を緊急調査

北海道札幌市出身 20代後半の女性ライター

世界各国のメディアで取り上げられているフランス国内の大規模な〈デモ〉。

デモがおこなわれている凱旋門の映像が繰り返されています。

その発端が「燃料税増税」であることは、おおよそ知っているのではないでしょうか。

ですが、そもそもどうして燃料税増税でこれだけの規模の抗議デモになっているのかわからないかもしれません。

そこで今回はフランスで勃発している燃料税増税抗議を目的とした〈デモ〉が激化する理由を緊急調査しました。

フランスでは5月革命の再来とまでいわれる大規模デモ

参照:ロイター

フランスは《革命の国》としても知られています。《民衆を導く自由の女神》という、自由の女神が国旗を掲げて民衆を先導するドラクロワの絵画が脳裏に浮かぶのではないでしょうか。絵画さながら、フランス国旗を凱旋門をバックに振りかざしている女性の画像もみているかもしれません。

「これは1968年の5月革命の再来に他ならない」ともいわれるほど、大規模な燃料税増税抗議デモが勃発したのは、パリ市内の冷え込みが厳しくなりはじめた11月17日のことでした。マクロン大統領の「燃料税増税」発表をきっかけに、フランス各地で毎週末にデモがおこなわれるようになりました。デモそのものは各地に飛び火してるものの、11月のデモではいわゆる「暴徒化」はそれほどみられませんでした。

12月1日にパリのメインストリート・シャンゼリゼでおこなわれた大規模デモが世界中で取り上げられるようになりました。観光スポットでもある凱旋門には落書き、凱旋門のマリアンヌ像は破壊、付近の自動車には放火、店頭では略奪行為がおこなわれる事態になったのです。

シャンゼリゼのメインストリートが、まるでイチョウのように黄色く彩られています。デモ参加者たちはイエローカラーのベストを着ているからです。このことから、デモ参加者は「ジル・ジョーヌ(黄色いベスト)」といわれています。

過激派・穏健派ともに黄色いベストで抗議をおこなっています。ジル・ジョーヌはどうしてデモをしているのでしょうか。言い換えれば、何に抗議をしているのでしょうか。まずは燃料増税だけではないデモの理由を整理します。

フランスの5月革命とは?

5月革命の再来といわれている今回のフランスのデモ。当時、高度経済成長を実現したド・ゴールが政権を掌握していました。しかし行動経済成長を背景に、格差の拡大が社会問題になりつつありました。

五月革命が勃発したのは1968年5月のこと。政府の教育政策に不満を抱いていたパリの大学生たちによる学生運動から端を発し、パリ市内の学生街・カルチエ=ラタンで警官隊と学生たちが激突、パリ市民から労働者にいたるまで学生たちを支持し、大規模なデモにまで拡大しました。

ようやく事態を重くとらえたド・ゴール政権は5月末に国民議会を解散した上で総選挙をおこなうことを発表。これによってようやく事態が収集されました。

今回のフランスで混乱が拡大しているデモは、格差の拡大というバックラウンドに5月革命との共通点がみられています。

1 マクロン政権に対する抗議

フランスでは日本と比較しても、政治に関心が高い国民性だといえます。支持する政党もきちんとあります。このデモの参加者が支持する政党は一致していません。SNSの呼びかけに応じてデモを起こしているのです。

その共通点は有り体にいえば「庶民」であること。マクロン政権そのものが、比較的富裕層から支持される傾向にあります。

マクロン政権では庶民にとって欠かせない公共サービスの規模が縮小され、高額納税者を対象に減税がおこなわれ、さらに法人税までもが減税されました。もちろん、この政策にはメリットもあります。フランス企業の業績もアップしているのです。

ですが、庶民の生活は厳しくなるばかりでした。もともとフランスではガソリン料金が高騰していたのです。そこにマクロン大統領が地球温暖化防止を理由に増税を発表したため、庶民の不満が爆発しました。

フランスでマクロン大統領のことを「現代のマリー・アントワネット」と揶揄することもあります。「軽油やガソリンを買うお金がなければ、電気自動車を買えばいい」は、まさにマリー・アントワネットの有名なセリフを彷彿とさせます。

さらに、マクロン大統領のブリジット夫人にも批判が集中していました。彼女こそがマリー・アントワネットという意見もあります。増額された役職手当、別荘におよそ3万5千ユーロ(日本円にして450万円相当)のプール建設、大統領官邸の食器を購入するため50万ユーロ(日本円にして6千500万円相当)の支出、さらに不透明なブリジット夫人所有の有価証券の存在も指摘されています。

実際に、燃料費を削減するためにトラクターではなく「馬」を活用しなければならない農家も出てきています。

燃料税増税の経過

フランスの燃料税は2018年になってすでに引き上げられています。庶民にとってなくてはならない存在である軽油は7.6セント(1リットルあたり)、ガソリンは3.9セント(1リットルあたり)引き上げています。これには国際規模の地球温暖化対策について取り決めたパリ協定が関係しています。

フランス政府は脱・炭素から、さらに雇用を生み出す、一石二鳥の政策を打ち出したわけですが、庶民にとっては負担以外の何物でもありませんでした。

そして11月、2019年1月1日から、軽油を6.5セント、ガソリンを2.9セント増税すると発表したのです。この段階的な増税に対して、ついに不満が爆発した結果、大規模デモへと発展しました。

2 フランス国内の格差問題に抗議

マクロン政権になってから、フランス国内では格差問題が浮き彫りになっています。首都パリと地方都市との格差、富裕層と低所得者の格差、ありとあらゆる格差が明確になっているのです。

マクロン政権が打ち出す政策は、企業にとってはプラスになるものもありますが、格差を助長するものとして、低所得者層から根強い反発がみられていました。

格差問題を背景に、一部の公立小学校では制服が導入されたことでも話題になっています。もともとは私立小学校にしかない制服でしたが、公立小学校では制服着用によって、服装による貧富の差をなくそうとしているのです。

フランスのデモ参加者のある言葉が人々の共感をさそっています。「エリートが地球の終わりを語るそのとき、僕たちはただ月末に苦しんでいる」というのです。世界が終わるどころか、月末を迎えられるだけの収入がないのが現実です。

3 救急車集結 搬送目的ではなく救急隊員のデモのため

フランス・ブルボン宮殿に並んだ救急車。ブルボン宮殿はフランスの国会にあたる建物です。救急車は搬送目的でブルボン宮殿に並んでいるわけではありません。救急隊員のデモを目的としているのです。

今回の大規模なデモで救急隊員たちが社会保障改革に対して反対しているのです。

フランスでは救急車は会社から派遣されています。社会保障改革ではこれまで患者サイドが会社を選択していたものが、病院サイドが選択するようになります。小規模な救急車運営会社は生き残れないという懸念から、救急隊員が反対デモを決行しました。

全国に拡大するデモの経過

クリスマス商戦に盛り上がる頃。クリスマス商品を取り扱いながら、ベニヤボードで店舗をガードする様子がみられています。いつもはクリスマスらしい飾り付けがされています。デモの影響から殺伐としたものになっています。

フランス国民が大集結したようにもみえますが、デモに参加しているのはごく一部だといえるでしょう。ですがその支持は国民全体の70%にのぼるといいます。

デモが本格化する12月まで、すでに100人以上の負傷者が出ています。死者も3人から4人に増えました。高齢の女性が巻き込まれて命を落としたのです。現場はマルセイユ。すでにマルセイユにまでデモが拡大していたのです。

実は、フランス国外にまで飛び火しています。ベルギー・オランダ・イタリアでもデモがおこなわれています。

ヨーロッパ全域で生活に困窮している人々が大勢いることは事実だといえるでしょう。特に、今回は燃料税の増税に端を発しています。EU諸国のドライバーたちは、いずれも燃料費に頭を抱えています。フランス国内のできごととはいえ、他人事ではありません。フランスまで輸送しているドライバーも少なくないのです。

マクロン大統領の支持率は急降下しています。現在では23%にまで落ち込んでいるのです。デモには不参加でもデモを支持している70%の存在が反映された結果といえるでしょう。事態収拾のため、燃料税増税の延長も発表されています。

延長しただけで燃料税が増税されることに変わりはないのですから、これだけで拡大した事態を沈静化できるとはいえないでしょう。今回のデモで拡散されているツイッターでは、「延期というだけで、2020年の燃料税はいったいどうなるのか」「燃料税増税がなくなったとしても、結局わたしたちの収入が変わらないのだから、生活だって改善されない」といった投稿がみられます。デモ参加者たちはさらにデモをおこなっています。事態の沈静化はみられません。

マクロン大統領に選挙実施を要求している野党も対応を測りかねている様子がみられます。今回はフランス国民が自発的におこなったデモです。野党が関与していたわけではないからです。

最後に

フランスの大規模なデモが世界中のメディアで取り上げられています。日本人は興味を持ちながらも、関係ないものと思っているかもしれません。ですが、状況を日本に置き換えてみたらどうでしょうか。日本の格差社会という同様にバックグラウンドを抱えています。お国柄もあるかもしれませんが、日本人は政治に対しての関心が低いようにもとらえられます。今回のフランスのデモ をきっかけに、日本の政治にも目を向けてみてはどうでしょうか。

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