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〈中国のシリコンバレー〉 深センが IT分野で急成長を遂げているらしい

北海道札幌市出身 20代後半の女性ライター

シリコンバレーを目指すエンジニア・プログラマー・デザイナーがいます。

アメリカ・カリフォルニア・サンフランシスコ――ではなく、〈中国のシリコンバレー〉といわれている広東省・深セン市です。

日本が高度経済成長をむかえていたころ、中国南部の漁村でしかなかった深センが経済特区に指定されてから、中国のシリコンバレー、ひいてはアジアのシリコンバレーにまで成長したのです。

Googleはハードウェア生産拠点のひとつとなっていた深センにオフィスを設立。中国深センの企業・商湯科技と米国Qualcommが共同開発で人工知能の開発を発表。さらに深センの通信会社である中興が5G(第5世代移動通信システム)の開発に成功、2019年にリリースを控えています。

IT産業・事業関係者であれば、すでに中国のシリコンバレー〈深セン〉に関心を持っているのではないでしょうか。

そこで今回は、日本で活躍するビジネスパーソンのため、経済特区・深センについてご紹介します。

中国発の経済特区・深センとは

 

深センは中国語の簡体字では「深圳」、繁体字では「深圳」と表記されます。日本語に該当するものがないため、深センが一般的です。「北上広深」(北京・上海・広州・深セン)の四大都市としてあげられるとともに、中国における金融センターとしての役割も担っています。大都市・香港に隣接しており、広東省の省都・広州の南南東という位置にあります。

経済特区に指定したのは鄧小平です。経済特区に指定されてから急成長を遂げ、現在では中国トップクラスの経済都市になっています。経済特区に指定されるまでは、華南地方の漁村にすぎませんでした。南国らしくマンゴーやライチが栽培されていたともいいます。

急ピッチで湿地を埋め立て、人工的に作り上げた地盤に工場を設立していったのです。

中国では北京・上海に匹敵する人口を擁しています。定住人口は800万人、日中の流動人口は1200万人にのぼるといわれています。比較するために横浜を例にあげてみます。横浜市の人口は375万人程度です。

中国華南エリアは広東語が一般的です。ですが、広東省にあって唯一、深センは北京語、つまり中国の共通語で会話がされています。これは、深センという都市が中国各地の移民によって構成されているためです。香港に接していながら、比較的英語での意思疎通ができないことも特徴といえるかもしれません。

深センの中心部には各企業のオフィスビルがひしめき合い、郊外に移動すれば工場が立ち並んでいます。

特に、近年はIT産業・事業が急成長を遂げました。その結果、中国のシリコンバレー、アジアのシリコンバレーなどといわれるようにまでなったのです。

【2018年度】深センのGDP成長率は8.0%を実現

深セン市統計局の発表によると、深センのGDP成長率が8.0%を実現したといいます。2016年から2018年にかけて、8〜9%を維持している状況です。

中国国家統計局の発表によると2018年度の中国のGDPは6.5%です。深センが中国全体と比較して経済成長していることがわかるでしょう。

どうして深センが中国のシリコンバレーになったのか

経済特区に指定されたことで、広東省の地方都市でしかなかった深センには工場が立ち並ぶようになりました。

当時の中国国内には技術力などありません。先進国から受注された製品、あるいは部品を最低価格で加工するだけでした。それでも、世界の下請けとしての役割を担っていたことは疑いようのない事実です。

この時点で「世界の工場」とまでいわれるようになりました。1980年代の深センは製造業を中心とした都市であり、シリコンバレーの片鱗はみられません。

日本では昭和から平成になった1990年代、深センは転換期をむかえます。世界の工場、ひいては世界の下請けが、深センではなく東南アジアに移行していったのです。

ですが、深センの製造業が危ぶまれることはありませんでした。中国企業の技術力も成長していました。中国企業のために製品の製造をおこなうことができていたのです。例えば、中国企業であるファーウェイ(華為技術)、ZTE(中興通訊)、テンセントなどが急成長を遂げています。

ファーウェイ(華為技術)

ファーウェイは世界シェア3位に君臨する携帯電話メーカーです。元人民解放軍所属・軍事技術関係者複数人によって、1987年、深センに設立されたという特殊な経緯があります。

当時の顧客は中国企業ばかりでしたが、海外契約を次々に締結して全世界に自社製品を送り出しています。需要が拡大しているSIMフリースマートフォン端末が支持され、世界企業に上り詰めました。先端技術開発に積極的であることでも知られています。2008年には国際特許出願件数が世界トップにもなりました。

日本国内でもファーウェイのスマートフォンがユーザーにとって選択肢のひとつとなっています。

ZTE(中興通訊)

ZTEは経済特区・深センの経済を牽引してきたともいえる、中国を代表する情報通信会社です。1985年に深圳市中兴半导体有限公司として設立されています。

最初期は携帯電話事業を中心におこなっていました。全国に基地局を設置、それと同時に携帯電話端末の販売をしています。

ネットワークプロダクト関連事業もおこなっています。2004年にはアテネオリンピックにおけるADSLアクセスプロジェクトを担当しました。

現在ではスマートフォンが売り上げを伸ばしています。北米大陸・ヨーロッパ大陸でも普及しています。

深センにおけるIT事業・産業の発展には、以下の3点が理由としてあげられます。

  1. 製造業中心であったため、ハードウェア・ソフトウェアの製造体制ができている
  2. 政府が誘致政策をおこない、起業をバックアップしている
  3. アクセラキューターとインキュベーターが充実している(※1)

アクセラキューターとは起業を目指している人、あるいは起業したばかりの企業に対して、事業を拡大するための支援をおこなう組織のことをいいます。インキュベーターとはベンチャー企業を対象に経営アドバイス、ならびに技術提供をおこなう団体、もしくは組織のことです。

例えば、電子部品の製品化について考えてみます。深センに拠点をおいて、そこで製品開発をおこないます。そして、深センの工場で製品化、そのまま深圳港から配送するのです。このスピード感が深センでビジネスをおこなう魅力のひとつだといえます。また、深センだけで部品が揃ってしまうことも珍しくないため、コスト削減にもつながります。

深セン市を管轄する広東省のスタンツも関わっているといえるのでしょうか。広東省は深セン市への援助を惜しみません。そして援助をしながらも口出しをしないのです。行政介入がないため、事業をおこないやすいといえるのです。

中国の秋葉原 深センの電子街〈華強北〉

参照:マニアック香港

深セン中心部、その福田区に位置する華強北(ファーチャンペイ)は、深センでも国際的なエリアです。世界中のバイヤーたちが電子機器・電子部品を買い付けにきているのです。また、各国からの視察団も目立ちます。

その規模は秋葉原のおよそ30倍。中国の秋葉原の日本の秋葉原がかすんでしまうほどの規模です。中国の秋葉原、そして日本の秋葉原。これだけ規模に違いがみられるようになったのは、華強北がバイヤー向けであること、秋葉原が一般客向けであることがあげられます。

世界各国のバイヤーは買い付けた電子機器・電子部品をすぐに本国へ発送します。

華強北エリアの電子街の裏通りをみればわかります。配送会社とダンボール会社がひしめき合っているのです。ここから即日で配送できるのです。

2018年 そして2019年の深センを読み解く

中国のシリコンバレー・深センの重要性はこれからも変わらないといわれています。製品の研究・開発から一貫しておこなえる環境はそれほどありません。

深セン市のGDPも香港と拮抗しながら、引き続き安定するのではないでしょうか。いずれにしても、中国平均を上回ることは間違いないはずです。

日本国内で体制を整えようと思ってもできないのが現状です。技術力があったとしても、これだけのスピードを実現することはできません。深センは唯一無二の存在ともいえるでしょう。

実際、スピード感ある環境で自分自身を試してみたいという気持ちから、日本人のエンジニアが深センの中国企業に転職して挑戦しています。

その一方で、ここ数日、日本国内で懸念が噴出していることも取り上げておきます。

日本政府が各省庁、および自衛隊で取り入れられている情報通信機器から、ファーウェイ(華為技術)とZTE(中興通訊)の製品を、公的機関から排除することを発表しました。

安全保障上の理由のためです。

すでにアメリカでは8月の時点で、政府機関、および関係機関において2社の製品を排除しています。同盟国であるアメリカから、日本にも対策するように呼びかけていました。

ファーウェイ、ZTEの製品に使用されている半導体にはウイルスが仕込まれており、情報流出、不正傍受、サイバー攻撃に悪用されている可能性があるといわれているのです。

もっとも、このウイルスの存在さえ確実なものではありません。現在販売されているファーウェイのスマートフォン端末は、Googleから安全性が保証されたものです。このことからも、ウイルスが仕込まれているとは考えにくいともいえるわけです。

2019年からはじまる5Gへの影響もあるかもしれません。ファーウェイとZTEは積極的に5Gの開発をおこなっていました。ファーウェイは5Gの特許も取得しています。

深センを代表するファーウェイとZTEはアメリカとその関係諸国における事業で厳しい状況に追い込まれていることは事実です。

最後に

中国のシリコンバレー・深センではチャイニーズドリームを目指す人々であふれかえっています。これまでの経験をもとに、起業をすることもできます。世界的企業で自分自身の技術力を試すこともできます。

なにより、目的のために突き進む人々の「熱気」にあおられることで、くすぶっていたモチベーションが焚き付けられるに違いありません。

ビジネスパーソンとして、世界から注目される深センを訪問してみてはいかがでしょうか。

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