
ストレッチ
WriterQOOL編集部
ハムストリングスのストレッチ方法を解説。効果や注意点、おすすめメニュー

「運動不足でランニングを始めたら、太もも裏が張るようになった……」という方は、ハムストリングスの正しいストレッチで解消していきましょう。
しかしハムストリングスは「オーバーストレッチ」になってしまいやすい部位でもあり、目的に合わせて正しくストレッチしていく必要があります。この記事でご紹介するストレッチ効果や注意点、具体的なメニューを参考にしていただき、ハムストリングスを効果的にほぐしていきましょう。
ハムストリングスのストレッチの嬉しい効果とは
ハムストリングスを構成する筋肉
- 大腿二頭筋(だいたいにとうきん)
- 半膜様筋(はんまくようきん)
- 半腱様筋(はんけんようきん)
ハムストリングスとは、太もも裏にある筋肉群の総称。
筋肉群というだけあって広い面積を持ち、体の中では4番目に大きい筋肉部位。主に「股関節を曲げる」歩く、立ち止まるなどの「足の動きをサポートする」といった役割を担っています。
あなたがランニング中に感じたハムストリングスの張りや痛みは、筋肉群のなかのいずれかの筋肉が固まっている証拠。足のつっぱりや痛みを感じることなく軽快にランニングを続けるためにも、ハムストリングスのストレッチで柔軟性を高めておきましょう。
この運動があなたの目的に合っているのか確かめるためにも、まずはハムストリングスのストレッチで得られる効果をチェックしてみて下さい。
柔軟性が向上し動作がスムーズになる
ハムストリングスをストレッチして柔軟性が上がると「歩く」「走る」「登る」「しゃがむ」など足に関係する動きがスムーズになります。
しかもストレッチで改善されるのは、筋肉の柔軟性だけではありません。関節と筋肉をつなぐ神経筋システムも活発に働くようになるため、スポーツパフォーマンス向上効果も期待できると言われています。
(参考:ストレッチングのエビデンス)
スポーツや日常生活の動作をスムーズにしたいのであれば、ハムストリングスのストレッチを取り入れるのは良い選択肢になるでしょう。
血行が良くなり痩せ体質になる
ハムストリングスのような大きい筋肉をストレッチすると、凝り固まった筋肉によって滞っていた血流がスムーズになり、基礎代謝が上がる効果も見込めます。
同じように生活していても少し痩せやすくなったり、人によっては肌ツヤが良くなったりと嬉しい効果を得られるでしょう。
(参考:厚生労働省e-ヘルスネット『基礎代謝量』)
ハムストリングスの筋肉をほぐすことで、スポーツのパフォーマンスが上がるだけだけでなく、日常生活の快適さも手に入るということです。
疲労回復効果も期待できる
ストレッチを行って血行が改善されると、疲労回復効果も期待できます。
1993年に国際武道大学で行われた実験では「負荷の高い自転車運動を5秒間行った後に20秒休憩」のサイクルを8回繰り返した被験者に対して、ストレッチや軽い運動などを施して効果の差が検証されました。
その結果、ストレッチの疲労回復率は優位に高かったと結論付けられています。(出典:激運動後のストレッチング,スポーツマッサージ,軽運動,ホットパックが疲労回復におよぼす効果)
例えば、走ったあとにハムストリングスを伸ばしておけば、翌日もベストコンディションでランニングを楽しむことができるということ。
その日の疲労は溜め込まず、ストレッチで対処しておくのが良いでしょう。
ハムストリングスを効果的にストレッチするための3つの注意点
ハムストリングスで得られる効果は素晴らしいものですが、ただただストレッチをすればいい部位ではありません。場合によってはスポーツのパフォーマンスが低下してしまったり、あるいは負荷を掛けすぎて逆効果になってしまったりすることも。
それを避けるために、実際にハムストリングスのストレッチを行う前に押さえておきたい注意点を3つにまとめてお伝えします。
- 適度な負荷で行う
- 1回短時間を数セットおこなう
- 目的によって「運動前」の取り入れ方を変える
適度な負荷で行う
ストレッチ全般に言えることですが、適度な負荷で行わなければ反対に筋肉を傷つけてしまう可能性があります。
A:「筋肉が引っ張られ、痛みや不快感を感じることなく伸ばしている位置を数秒間保持できるポイント」
→これはOKです。B:「自分の動かせる範囲を超えて筋肉を伸ばし、筋肉が引っ張られたり、筋肉が緊張したりするポイント」
→これはダメです。特にオーバーストレッチがかかりやすいのが、腰・太腿の裏(ハムストリングス)・内ももです。
要するに自分が気持ち良いと感じる程度の負荷でなければ、いわゆる「オーバーストレッチ」と呼ばれる状態になってしまい、逆効果になることも。
特にハムストリングスを始めとする太ももまわりの筋肉はオーバーストレッチになりやすいため、無理に伸ばさず適度な負荷でストレッチすることを心がけましょう。
1回短時間を数セットおこなう
オーバーストレッチの状態にならないためには、短時間のストレッチを複数回に分けると効果的です。
特にハムストリングスの柔軟性アップには、50秒続けるよりも10秒を5回繰り返すといったように、1回短時間のストレッチを複数回繰り返すほうが効果的だとの研究結果も見つかりました。
(参考:反復性他動ストレッチングのハムストリングス伸張に及ぼす効果)
つまり安全面においても、効果においても、1回10秒程度の短時間のストレッチを複数回繰り返すのが良いでしょう。
目的によって「運動前」の取り入れ方を変える
運動後にストレッチを取り入れることで、先述したような「疲労回復」「柔軟性のアップ」などの効果を得られます。これはマストで行いましょう。しかし「運動前」に関しては、その運動の目的によってストレッチの取り入れ方を工夫する必要があるかもしれません。
2011年に秋田大学で行われた実験では、ハムストリングスにストレッチを行うことで一時的に筋肉が弱まってしまうと結論付けられていました。(参考:ハムストリングスに対するスタティックストレッチングが筋力と関節可動域に与える影響の時間的変化)
つまり運動前のハムストリングスへのストレッチは、スポーツのパフォーマンスにおいては逆効果になる可能性が示されています。
例えばランニングのタイムを縮めたい、筋トレの重量を更新したいといったパフォーマンスを重視する場面では、運動前にハムストリングスを伸ばしすぎない方が良いでしょう。
しかしウォームアップで体を温めるような「動的ストレッチ」は取り入れるべきですし、パフォーマンスよりも安全性を重視するなら静的ストレッチを取り入れても良いかもしれません。
このように、目的に応じてストレッチの取り入れ方を変えることが大切です。
姿勢別|ハムストリングスに効果的なストレッチメニュー5選
それでは最後に、自宅やオフィスで簡単に始められるハムストリングスのストレッチ方法をご紹介します。
運動後はもちろん、生活の一部にハムストリングスのストレッチを取り入れて、疲労回復やランニングのパフォーマンスアップを目指しましょう。
ハムストリングスに効果的なストレッチ
立位のストレッチ|即効性が高くておすすめ
立位でおこなうなら「ジャックナイフストレッチ」というメニューがおすすめです。
動作は非常に簡単ですが、整形外科などでもリハビリの一環として取り入れられているほど効果が高く、雑誌などのメディアでも「魔法のストレッチ」とも呼ばれて注目されているメニュー。
運動後のケアだけでなく「疲れが溜まって体が重だるい」というときにも取り入れてみてください。
やり方
- 両足をそろえて立つ
- ひざを曲げ、太ももとお腹をつけるようにかがみ、両手で足首を持つ
- 太ももとお腹をつけたまま膝を伸ばす
- 10秒で元に戻る
- 5回繰り返す
ポイント
- 太ももとお腹が離れないよう注意する
座位のストレッチ|デスクワークの息抜きにおすすめ
仕事中のスキマ時間には、椅子に座った状態で行えるストレッチがおすすめ。「脚がむくみやすい」という人にも効果的なストレッチです。
一番のポイントは足首の角度。つま先を上げて足首を直角にすることで、ふくらはぎの筋肉も一緒に気持ちよく伸ばすことができます。
仕事の合間にぜひ実践してみてください。
やり方
- 椅子に浅く座り、一方の足を前に出す
- 反対の手でつま先を触り、上体を前に傾ける
- 腿裏の伸びを感じたら30秒キープ
- 反対も同様におこなう
POINT
- つま先を上げて足首を90度に保つ
- 背中は丸めず、骨盤からひねるイメージでおこなう
床でおこなうストレッチ|リラックスタイムにおすすめ
毎日のルーティンにしていくなら、床で行えるストレッチがおすすめ。一般的な前屈に「かかと」を地面に押し付ける動作を追加することで、高いストレッチ効果が得られます。
紹介されている動画のコメント欄でも「想像以上に体が柔らかくなった」との声が多数見つかりました。ぜひ体験してみてください。
やり方
- 右足を伸ばし、足首を90度に立てる
- 左足の踵が左側の内腿につけるように曲げる
- 背筋を伸ばし、足を伸ばしている方向へ体を傾ける
- 両手を床につき、伸ばした足の踵を10回押し付ける
- これを左も同様に繰り返し、1日3セットおこなう
POINT
- この姿勢が難しい場合は、背中を壁につけて行うとやりやすい
- 股関節を軸にするイメージで前に倒す
タオルを使ったストレッチ|特に柔軟性がない人におすすめ
「柔軟性に不安がある」という人は、タオルを使ってストレッチしてみましょう。「長座すると膝が曲がってしまう」「前屈ができない」というほど体が固い方でも、余計な力を入れることなく簡単にストレッチを楽しめます。
今回のような寝転がりながらできるメニューは、リラックスタイムにもぴったり。無理のない範囲で気持ちよくハムストリングスを伸ばしていきましょう。
やり方
- 仰向けで足の裏にタオルを引っかける
- タオルを引っ張って脚を上げる
- もも裏の筋肉が伸びているところで10~15秒キープ
- これを左右3セットずつおこなう
POINT
- 太ももや肩に力が入らないようにする
- 膝が曲がらないように注意
- 脚の角度を大きくするとストレッチの強度が高まる
ストレッチポールで筋膜リリース|さらに柔軟性が高まる
「もっとハムストリングスの柔軟性を高めたい」という人は、ストレッチと合わせて筋膜リリースをおこなうと良いでしょう。
凝り固まった筋肉にくっついた筋膜をはがすことで、血液やリンパ液の流れが良くなり筋肉の弾力が回復でき、さらに柔軟性が高めることができます。
(参考:ハムストリングスに焦点を当てたストレッチと筋膜リリースの効果と比較検証)
ストレッチポールがなくても、テニスボールやストレッチボールでも代用可能。このようなグッズも使って柔軟性を高めていきましょう。
やり方
- ポールの上にお尻をのせる
- ポールの上にもも裏面が当たるように位置を調整する
- ゆっくりとしたリズムでしっかりと体重を乗せながらポールを転がす
- これを60〜90秒おこなう
POINT
- 面倒な時は両足乗せて転がしてもOK
- 痛気持ちいいと感じるくらいの圧力でおこなう
- しっかりほぐしたい時は、片足を重ねて体重をかける
太もも裏の張りを解消するには、ハムストリングスのストレッチを
ハムストリングスのストレッチを取り入れて「太もも裏」の柔軟性を高めることで、スポーツパフォーマンスが向上するだけでなく、痩せやすい体質や快適な日常生活も手に入ります。
今回紹介したストレッチで気持ちよく体をほぐし、運動中はもちろん、日常生活でも疲れにくい体を手に入れましょう。
また、ハムストリングスの強化にはストレッチと並行して筋トレをおこなうのが効果的。下記の記事も参考にしていただき、クールなカラダを作っていきましょう。