監修者プロフィール
- パーソナルトレーナー監修者 奈良 賢樹
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クロスフィットトレーナーとしてキャリアを重ね、現在は札幌市のパーソナルジム『GOOD CONDITIONING GYM』に所属。12年に及ぶラグビー競技歴、トップクラブリーグでの経験も併せ持つ。誠実に相手と向き合う姿勢と、ロジカルで分かりやすい指導に定評あり。
ベンチプレスの正しいやり方
今回プロトレーナーの奈良さんから教わったのは「パワーフォーム」と呼ばれるベンチプレスの基本フォーム。まずはパワーフォームの動作を確実に身につけることが大切だと教えていただきました。
そもそもベンチプレスとは、大胸筋・上腕三頭筋・三角筋を同時に鍛えられるトレーニングメニュー。一度で複数の筋肉に負荷を与えられる、コンパウンド種目(複合関節運動)に含まれる筋トレ種目です。
スクワット・デッドリフトと合わせて「BIG3」の一つにも数えられており、男性なら厚い胸板作りに、女性ならバストアップに有効。男女問わずトレーニングメニューに取り入れられる、とても人気の高い種目です。
しかしその一方で「ラックの調整方法が分からない」「呼吸のタイミングが難しくて失神しそう」と不安に感じている声も……。
ぜひ以下の「ベンチプレスの正しいやり方」を覚えていただき、チャレンジしていって下さい。
STEP1. ラックの高さを調整する
- バーは「腕を伸ばしたとき自然に届く高さ」に設定する
- セーフティーバーは胸と同じくらいの高さに調整する
マシンによってはバーの高さを調整できない場合もあります。腕を目一杯のばさなければ届かないような位置だと危険ですが、手の届く範囲にあれば基本的には問題ありません。
しかし「セーフティバー」の調整はぜったいに必要。手が滑ったり重量に負けたとき、バーベルに体を潰されるのを防げます。
セーフティバーの位置は「胸とおなじくらいの高さ」が理想ですが、心配な方や初心者は胸より少しだけ上に設定しておきましょう。
セーフティーバーは「胸より低い位置」にすると良いと言われますが、それは上級者向け。すでに何度もその重量でトライしている場合など、ぜったいに潰されない自信があるならおすすめです。
大胸筋の可動域を広くとれて、効率よくトレーニングできるでしょう。
STEP2. スタートポジションをとる
- バーが目の真上にくるように横になり、視線は天井に固定する
- 足を外に開き、肩甲骨を寄せる
- バーを「サムアラウンドグリップ」で握る
バーを目の真上にくるような位置に調整する理由は、実際にバーを降ろしたときに胸の上にセットしやすくするためです。
例えば頭の真上にバーがきてしてしまうと、バーを降ろす時に反るような体勢になり、腕や胸に力が入りにくくて危険。反対にあごや首の上にセットすると、いざバーを降ろすときにストッパーが邪魔になって胸の上にセットできません。
寝転んだときから、背中の肩甲骨を寄せて胸を張った姿勢を維持しましょう。ベンチプレスで大胸筋を鍛えるには、肩甲骨を寄せたフォームが大切です。
むずかしければ弓矢を引く動作を試してみて下さい。「肩甲骨が寄る」というイメージがわかると思います。
加えてバーを握るときのグリップにも注意が必要です。以下の写真の通り「サムアラウンドグリップ」でバーを握って下さい。
「サムアラウンドグリップ」とは、写真のように親指を上に添えてバーを握り込むようなグリップ。親指がストッパーになり、誤ってバーを落とす危険性が低くなります。
NG例の親指を引っかけないグリップは「サムレスグリップ」と呼ばれており、バーが滑りやすく危険です。特別こだわりがある上級者以外は、絶対にやらないでください。
STEP3. バーベルを胸のうえにセットする
- 肩甲骨を寄せたまま、胸を高く保つ
- 息を吸って腹圧をかける
- 胸の中央(乳首の付近)の真上までバーを降ろす
ポイントは「腹圧」をかけて体を安定させ、力が入りやすい状態を維持することです。
腹圧とは「横隔膜の下にある内臓が集まっている空間にかかる圧力」のこと。腹圧を高めることで体幹が安定して、ベンチプレスでより重たい重量を上げられるようになります。
息を吸ってから呼吸を止めつつ、腹筋に力を入れると腹圧がかかります。
初心者の場合、まずはバーを持たずに腹圧をかける練習をしましょう。私が教えるときは、まずは正しいフォームと腹圧の掛け方をお教えしてから本番にチャレンジしていただいています。
STEP4. バーベルを上げる
- 動作中に肩が浮かないように注意する
- 足の裏でふんばりながら全身でバーを上げる
- バーを上げ切ってから息を吐き、呼吸を整える
正しいパワーフォームでベンチプレスを行うポイントは、ベンチの上でブリッジするようなイメージを持つことです。腹圧をかけるのはもちろんですが「足の裏」と「お尻」に力を入れることもパワーフォームのコツ。
ベンチプレスは胸や腕だけを使う種目と思われることもありますが、そうではありません。正しいフォームを取り入れて体全体に負荷を分散することで、全身の筋力を使って効果的にトレーニングできるでしょう。
ベンチプレスを強くするには、BIG3の他の種目も行って全身を鍛えることも理に叶っています。
よりベンチプレスを極めたい人や効率よく全身を鍛えたい人は、ぜひスクワットとデッドリフトもあわせて取り入れて下さい。
ベンチプレスの応用フォーム
ベンチプレスを取り入れる場合、さきほど解説した「パワーフォーム」だけでも十分に鍛えられます。しかしより美しい大胸筋を手に入れたい人は、ベンチプレスの応用フォームも試してみて下さい。
ここでは大胸筋の「上部」を鍛えられる「インクラインプレス」と、大胸筋の「下部」を鍛えられる「デクラインプレス」、加えて自宅でもベンチプレスを取り入れるための「ダンベルプレス」をご紹介します。
ここでも共通して奈良さんが強調して教えてくださったのは、基本フォームを大切にするということ。焦って「もっと重たい重量を上げよう」と思わず、一つひとつの動作を着実にこなせるようになりましょう。
インクラインプレス|大胸筋上部を鍛える
- インクラインベンチに座り、セットポジションをとる
- 鎖骨の上あたりにバーを下ろす
- 前腕を床と垂直にしながらバーを上げる
インクラインプレスは、ベンチの角度を調整して上体を起こして行います。角度が固定された「インクラインベンチ」があればそれを使い、可変式のベンチを使うなら30度〜40度の角度をつけましょう。
お尻の筋肉をあまり使えないため、通常のベンチプレスよりも肩の筋肉と関節への負担が大きくなるのがインクラインプレスのデメリットです。そのため、基本的には通常のベンチプレスよりも扱う重量を軽くするのがセオリー。
胸の上の方のボリュームが足りないとき、補助的に取り入れたい種目です。
初心者がインクラインプレスに挑戦すると、バーを上げるときに前腕を曲げてしまう人がほとんど。
前腕の正しい角度は「床と垂直」です。肩の負担が下がり、よりバーに力を伝えやすくなるため、腕の角度には気をつけて挑戦して下さい。
デクラインプレス|大胸筋下部を鍛える
- デクラインベンチ、もしくはフラットベンチに横になってブリッジする
- セットポジションをとる
- 胸の中央(乳首の付近)にバーを下ろして上げる
デクラインプラスは、インクラインプレスと同様にお尻の力を入れにくい種目。通常のベンチプレスよりも扱う重量を下げて挑戦することをおすすめします。
上の画像では、通常のベンチの上でブリッジをすることで角度をつけていますが、デクラインベンチがあればベスト。上体を30度ほど下げて挑戦してみて下さい。
ダンベルプレス|自宅で大胸筋を鍛える
- ダンベルを持って床に寝る
- 肩甲骨を寄せながら肘が床につくまでダンベルを降ろす
- 肘が床についた瞬間にダンベルを上げる
自宅にベンチがあればベストですが、なければ床でもOK。
床でダンベルプレスでは、ベンチよりも体の設置面が大きくなるため、初心者は背中が丸まりやすくなってしまいます。大胸筋に負荷をかけるために、かならず肩甲骨をよせて行いましょう。
バランスボールがあれば、ベンチ代わりに利用してダンベルプレスをしてもOK。体の設置面が少ないぶん体幹が鍛えられるうえ、肘をより深く下ろせることで大胸筋の可動域が広く取れ、筋肥大に効果的です。
「ダンベルプレスをすると肩を痛めやすい」という人は、掌を向かい合わせにする「ニュートラルグリップ」という握り方がおすすめ。肩の負担が少なくなり、痛めにくくなります。
プロトレーナーにベンチプレスについてお聞きしました
当記事を監修していただいたプロトレーナーである奈良さんに、ベンチプレスのやり方に関するその他の疑問に回答いただきました。初心者が抱きやすい疑問を、一問一答形式でまとめてあります。
Q. よく聞く「最大挙上重量」は知っておくべきですか?
A.初めてベンチプレスを行う場合、知らなくても大丈夫です。
確かに「筋肥大には最大挙上重量の80%前後の重さで、6〜10回の動作を行うべき」といった考え方はあります。しかし初心者は、プレートをつけずにバーのみで行うところからスタートしましょう。
いきなり「最大挙上重量」を意識してトレーニングを始めても、フォームが疎かになっては元も子もありません。まずは安全かつ大胸筋に効果的な正しいフォームを身につけましょう。
まずはバーのみで始めて、正しいフォームで5回以上できたら2.5kg〜5kgずつ重さを上げていって下さい。このステップであれば最大挙上重量の計算は不要で、着実に筋肥大を狙えます。
しかしどうしても最大挙上重量が知りたい場合は、ワンレップマックス表を使って目安の数値を計算してみて下さい。
Q. ベンチプレスの重量を上げる適切なタイミングはいつですか?
A.ベンチプレスを1セットあたり5回以上、正しいフォームで行えるようになれば上げて良いでしょう。
しかし一度に増やす重量は2.5kg〜5kgにして下さい。いきなり5kgよりウエイトを増やすと、フォームが崩れやすくなってしまいます。
また、1セットあたりの挙上回数は、重量を上げる前よりも少なく設定しましょう。例えばいつも8回3セットだった場合は、重量を上げたばかりのときは6回4セットといった設定がおすすめです。
重くなって挙上回数が少なくなる分、セット数を増やすことで筋肉に高い負荷を与えていきましょう。
Q. 重量が停滞しているときの対策はありますか?
A.まずはベンチプレスのフォームを見直しましょう。フォームの崩れにより、筋力を正しく使えていないことが考えられます。
特に初心者は「重量が停滞しているなら、重さを下げて回数を増やそう」とする傾向があります。しかしこれは逆効果。筋肥大には重い重量が効果的なため、今の重量のままセット数を増やして追い込みましょう。
フォームを見直しながらセット数を増やして追い込むことで、きっと拳上重量は上げられるはずです。
Q. 腕は太くなりますが、大胸筋がなかなか大きくなりません。原因は何ですか?
A.正しいフォームと比べて背中の寄せ方が足りず、胸の開きが少ない可能性があります。
上腕三頭筋ばかり発達してしまう人は、ほとんどが上記のケースに当てはまります。特に正しいフォームのレクチャーを受けたことのない方に多く、腕の筋肉だけを使って大胸筋に効いていない可能性があります。
まずはバーを持たずにベンチに横になり、肩甲骨を寄せて胸を高く保つ練習をしましょう。トレーナーにチェックしてもらうのがベストですが、それが難しければ鏡でチェックしながら正しいフォームを身につけていって下さい。
Q. 「ベンチプレス初心者は卒業」という重量の目安はありますか?
A.ベンチプレス界隈では、自分の体重の重さを挙げるのが最初のゴール。まずはそこを目指しましょう。
また、自分の体重の次は100kg、120kg、140kgを挙げるのが一般的なステップです。前述のように2.5kg〜5kgずつ重量を増やしつつ、着実に正しいフォームで行うのがベンチプレス上達のコツ。焦らずじっくりと大胸筋を育てましょう。
ベンチプレスが強くなりたい人におすすめのトレーニンググッズ3選
ここでは奈良さんに教えていただいた内容を参考に、ベンチプレスが強くなりたい人に向けたおすすめグッズを編集部がピックアップ。「これは押さえておくべき」という厳選アイテムをご紹介します。
HAIGE 可変式ダンベル|全トレーニー必須の宅トレグッズ
こちらの「HAIGE 可変式ダンベル」は、2.3kg〜20kgまでの重量を設定できるダンベル。重さを幅広く変えられるため、ダンベルベンチプレス初心者〜上級者まで対応できる優れものです。
プレートの下部は平らになっており、転がりにくい安全設計。また脱落防止機能がついているため、トレーニングに安心して取り組むことができます。まずはこのアイテムを手に入れて、逞しい大胸筋をつくっていきましょう。
UNDER ARMOR トレーニンググローグ|熱心なトレーニーの手を守るサポートアイテム
トレーニンググローブは、グリップ力向上と手まめの防止に役立つ筋トレ道具。ジムトレ・自宅トレを問わず、ダンベルやバーベルを扱う際には必須とも言えるアイテムです。
QOOL編集部のおすすめは、上記画像の「アンダーアーマー トレーニンググローブ」。さりげないロゴデザインが大人っぽく、機能性もさることながらお洒落さも抜群です。まだトレーニンググローブを持っていない人は、この機会に一枚、マイグローブを入手しておきましょう。
明治 ザバス ホエイプロテイン|あなたをベンチプレスが強い人にする必須アイテム
プロテインは、タンパク質を効率良く補給できるアイテム。身体づくりに必須です。
QOOL編集部のおすすめは、こちらの「明治 ザバス ホエイプロテイン100 ココア味」。
国内製品で安心なことに加え、日本人が飲みやすい味に仕上げてあり、タンパク質以外のビタミン栄養成分も豊富です。
日常生活で不足しがちなタンパク質を補えるプロテインは、ベンチプレスが強くなりたい人にとっては必須アイテム。まだ持っていない場合、必ず購入しておきましょう。
ベンチプレスの正しいやり方は「フォーム」が命
ベンチプレスでは「もっと重いウエイトを」と、重量を追い求めてしまいがち。
しかし正しいフォームを身につけて効率よく筋肥大させていくことが、結果的に重量アップにも、必要な筋肉をつけることにも繋がります。
今回パーソナルトレーナーの奈良さんからベンチプレスの正しいやり方を教わったときに印象的だったのが、一つひとつの動作がとても丁寧だったこと。奈良さん自身も、ベンチプレスの「正しいフォーム」を大切にしていることが伝わってきました。
奈良さんにとっては軽く上げられる重量であるにも関わらず、セットの仕方やバーベルの持ち上げ方までが本当に丁寧で、ベンチプレスという種目への敬意を感じたほど。
美しい逆三角形の体型をつくるには、焦らず基礎を固めることが大切です。「肩甲骨を寄せる」「腹圧をかける」「グリップにも注意する」といった基本動作を、一つひとつ着実に身につけながらベンチプレスを極めていきましょう。
ベンチプレスの正しいフォームを身につけ、地道な努力を重ねて、ぜひ理想の大胸筋を作りあげていって下さい。
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