監修者プロフィール
- パーソナルトレーナー監修者 藤本 千晶
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2010年に仙台大学大学院修了後、車いすバスケットボール日本代表選手や高校バスケットボールチーム・大学男子ラクロスのストレングスコーチとして活動。
2016年からは活動拠点を栃木県宇都宮市に移し、パーソナルジムにて一般利用者を対象にした健康増進・体型改善のトレーニング指導を経験する。
現在はフリーランストレーナーとして、女性の体型改善専門のパーソナルトレーナー・オンラインダイエットコーチとして活動中。SNS
バスケにおいて持久力のトレーニングは必要不可欠
バスケにおいて、持久力をトレーニングすることは必要不可欠。高強度で走り続けるバスケでは、試合が進むにつれて疲労が蓄積します。
終盤にワンポゼッションを争う試合においてミスをすることは、致命的です。疲労が大きくなることで、シュート成功率や戦術遂行能力が低下。メンタルも弱気になってしまい、勝敗に大きな影響を及ぼします。
そのため真剣に勝利を目指すのならば、持久力トレーニングを必ず行う必要があるのです。
バスケで持久力が削られるシチュエーション
続いてはどんな場面で持久力が削られていくのか、そのシチュエーションについて解説していきます。
身体接触
意外に思うかもしれませんが、バスケにおいて持久力が削られる大きな部分は身体接触。何度もぶつかり合い、押し合いを行うと大きなエネルギーを消耗し、次第に疲労が蓄積されていくのです。
例えば身長2m、体重110kgのセンターを相手にしていると想像してみてください。あなたは185cm80kgで、ローポストでマッチアップしたとします。ローポストでは押しこまれないよう、必死に下半身を使って耐えますよね。
ある程度加速がついた110kgの圧力を、何度も耐える。このときに下半身や体幹は、大きなエネルギーを発揮しています。しかし大きなエネルギーを使う分、疲労も貯まることは、想像に難くないでしょう。
バスケでは、そういった場面が無数に登場します。ですから身体接触に強くなることは、持久力を向上させるためにも大切になります。
速いテンポの試合展開
速いテンポで攻守の切り替えが行われる試合展開になると、持久力は削られていきます。お互いに速攻の出し合いになると、常に全速力で走り続けなければいけません。
近年は、ファストブレイク・アーリーオフェンスからの得点を狙うチームが増加している傾向にあります。以前よりも試合のテンポは上がりやすく、全速力で走る時間は長くなったと言えるのです。
そのため、全速力でのランを何度も繰り返せるだけの持久力を向上させることが大切になります。
強いプレッシャーをかけ続けるデフェンス時
デフェンスで強いプレッシャーをかけ続けることでも、スタミナを消耗します。デフェンスはオフェンスの動きに合わせて、守備陣形をめまぐるしく動かさなければいけないため、より多く走らなければいけません。
オフェンスは一人がドライブしても、守備を絞らせないために他の数人はその場で待っていることも多いのです。しかしデフェンスは、ドライブされた場合、他のプレイヤーがカバーに入ります。さらに、カバーに行って空いたエリアを他のプレイヤーがカバー、というように全体が動きます。
これを強いプレッシャーをかけて行うとデフェンスは必然的に多くの距離を走らなければいけないため、持久力を大量に消費していくのです。
バスケの持久力を高めるために必要な要素
バスケにおける持久力を高めるために必要な要素を、3つに分解して解説していきます。
体重と筋力
バスケの持久力を高めるうえで、体重と筋力を高めることは重要。前述のとおり、頻繁に発生するぶつかり合いでの持久力の消耗を抑えられるからです。
ぶつかり合いの強さにおいて、体重は非常に大事な要素。体重が重くなるほど、ぶつかったときに相手のエネルギーを消耗させる一方、自分のエネルギーは節約できます。
しかし体重が重くなることでスピードが遅くなったり、走るための持久力が落ちたりする可能性もあります。その対策として、筋力の向上させていきましょう。
重くなった体を強い筋力で支えることで、スピードとスタミナを両立しながらプレイできます。
例えば現時点で、あなたが持てる最大の重さが110kgだとしましょう。であれば、長時間100kgの重りを持ち続けることはできないはず。しかし持ち上げられる最大の重さが200kgまで向上したら、100kgは楽に持ち続けられますよね。
そのため体重を伸ばして筋力を向上させることは、バスケの持久力を向上させるために役立つのです。
有酸素性と無酸素性持久力
バスケの持久力をあげるためには、有酸素性持久力と無酸素性持久力を向上させましょう。
有酸素性持久力とは、酸素を使って体内に蓄えてある脂肪などのエネルギーを利用する体のシステム。主に歩いているときやジョギングをしているときに多く使われます。運動レベルが高くなると使わないものの、有酸素性持久力が低いと低強度の運動でも疲労が蓄積しやすくなり、バスケ全体のパフォーマンスに悪影響を与えます。
無酸素性持久力とは、酸素を使わずに糖質などのエネルギーを利用する体のシステム。主に全力ダッシュやダッシュを繰り返すときなど、高強度の運動の際に使われます。無酸素性持久力が低いと高強度の運動を繰り返せず、試合終盤に失速する原因になります。
体が持っているエネルギーを最大限使うためにも、有酸素性・無酸素性持久力を高め、高強度の運動を何度も繰り返せるようにしていきましょう。
瞬発力
「持久力を上げたいのになんで瞬発力?」と不思議に思ったことでしょう。
しかし瞬発力を上げて、速い速度で走れるようになることは、持久力向上に大きく役立ちます。なぜなら瞬発力さえあれば、全力の速度を発揮する機会が減るからです。
例えば、スリーポイントラインのトップでボールを受けた選手がいるとしましょう。デフェンスはカバーダウンなどでリング付近まで下がっていた場合、素早く近づいてプレッシャーをかける必要があります。
そのときに瞬発力のある選手であれば、全速力以下の速度でも間に合うかもしれません。しかし足の遅い選手では、全力で動かなければプレッシャーをかけられないのです。
全速力で動くことは大量のエネルギーを消費しますし、ゆっくり動くことはエネルギーの節約になります。
ですからより速く動けることは、持久力を節約することにつながるのです。
バスケの持久力を上げるトレーニングメニュー3選
ここではバスケ選手が持久力を鍛える際のトレーニングメニューを紹介します。
もちろんこの他にも持久力を鍛えるメニューはありますし、個人差もあるため、取り入れるべきメニューは異なります。
ここではバスケ選手が持久力を鍛える、ベーシックなトレーニングメニューを、一例として紹介します。
バーベルスクワットと体重の増加
バスケの持久力を上げるのにおすすめなのは、バーベルスクワットと体重を増加させること。バーベルスクワットで高負荷をかけて筋力を向上させつつ、同時に体重増加を狙うことで、身体接触力の向上を見込めるからです。
特に身体接触の際は、下半身と体幹の筋力の強さが極めて重要。バーベルスクワットは、その両方を同時に強化してくれる、コスパの良いエクササイズです。
バーベルスクワットのやり方
- しっかり胸を張ってバーを背中に担ぎ、ラックから離れる
- 足幅を肩幅程度にひらき、つま先を30〜45度程度開く
- お尻を突き出して太ももが地面と平行になるまで下がる
- 太ももが地面と平行になるまで下がったら立ち上がってくる
- 決めた回数とセット繰り返す
※1 実施している最中は腰が曲がらないように注意
※2 足の裏全体は常に地面にベッタリくっついているように
インターバルトレーニング
バスケの無酸素性持久力を上げるためには、インターバルトレーニングがおすすめ。高強度の運動を何度も繰り返すエクササイズです。
インターバルトレーニングとは、全力ダッシュのような高強度の運動とジョギングのような低強度の運動、もしくは完全休息を交互に組み合わせ行うトレーニング方法。日本ではTABATAプロトコルなどが有名です。
下記のトレーニングメニューは、バスケ選手なら誰でも行ったことのある(かつ大嫌いな)フットワークメニューですが、無酸素性持久力向上のためには歯を食いしばってでも取り組むべきメニューなのです。
インターバルトレーニングのやり方
- ベースラインにたち、手前のフリースローラインまでダッシュし再度ベースラインに戻る
- ベースラインからセンターラインにダッシュ、ベースラインに戻る
- ベースラインから反対側のコートのフリースローラインまでダッシュ、ベースラインに戻る
- ベースラインから反対側のベースラインまでダッシュ、再度ダッシュでベースラインまで戻る
- 走った時間のおおよそ二倍休む
- 4〜8本程度繰り返す
プライオメトリクストレーニング
プライオメトリクストレーニングも、瞬発力を向上させ、持久力の消費を抑えることにつながります。
プライオメトリクストレーニングとは、筋肉がもつゴムのような性質を利用した方法。筋肉は瞬間的に引き延ばされると、ゴムのように元に戻ろうとする弾力が働きます。その力をうまく利用し、自分の力で元に戻そうと働く力と組み合わせることで、瞬間的に大きな力を発揮できるのです。
スクワットで筋力を高めながら、プライオメトリクストレーニングを並行して進めることで、瞬発力の向上が見込めます。高めた瞬発力を活かすことで、エネルギーの節約につながるでしょう。
プライオメトリクストレーニングのやり方
- 高さのある台の上に乗る
- そこから飛び降りて、床に着地した瞬間に高く飛び上がる
- 衝撃を吸収するように着地し、再度台の上に登り、繰り返す
バスケで持久力トレーニングをする際の注意点
最後にバスケにおける持久力トレーニングにまつわる際の注意点をまとめました。
実際に鍛え始める前に、ぜひ目を通しておいてください。
長い距離を走ればいいわけではない
バスケの持久力を向上させたいからと言って、長い距離をひたすら走り込むのは要注意。バスケ経験が浅いうちは効果が見込めますが、ある程度のレベルまでいくと頭打ちになります。
持久力が低ければ、ちょっとしたジョギングなどの低強度の運動でも疲れがたまり、次第にスタミナも向上していきます。
しかしジョギングなどでは疲れない体力レベルまで育っていくと、長距離を走っても持久力の向上は見込めなくなっていくのです。
長距離を走ることで、ひざや腰への負担も大きくなります。やみくもに走るのではなく、インターバルトレーニングなどを行いつつ、持久力を高めていきましょう。
ポジショニングの上手さは持久力に大きな影響がある
ポジショニングの上手さは、持久力の消費に大きく影響します。なぜならポジショニングが良ければ、最小限の動きでプレイできますし、悪ければ大きく動かなくてはいけないからです。
オフェンスでもデフェンスでも、適切な位置にポジションを取ることが重要であるのは言うまでもないでしょう。ポジショニングさえ上手ければ最小限の動きでフリーのシュートを打てたり、オフェンスにプレッシャーをかけたりできます。
逆に位置取りが下手だと、無駄な動きをしてエネルギーを消費してしまうばかりか、効果的なプレイが行えない可能性も高くなります。
実際に私が指導した中でも、有酸素性持久力のテストでトップの成績を残した、1軍と2軍を行ったり来たりしている選手がいました。テストの結果がトップにもかかわらず、その選手の持久力に対する監督からの評価はイマイチだったのです。
逆に、有酸素性持久力のテストでは平均的だったレギュラー選手。その選手の持久力に対する監督の評価は、チームで1〜2番を争っていたのです。
監督とその理由を話し合ったところ、ポジショニングの上手さの差という結論になりました。
有酸素性・無酸素性持久力を鍛えることはもちろん大切ですが、持久力はポジショニングの上手さに大きく影響を受けます。ですから、常に効率よく動けるように練習を行いましょう。
まとめ
バスケにとって持久力が大切なことは、火を見るよりも明らかです。しかし、闇雲に走り込んでも、持久力を向上させるには非効率。
本記事で紹介したように、身体接触時などバスケ特有のシチュエーションで持久力を削られることもあります。その場面に的確にアプローチすることで、持久力を改善していくのがおすすめです。
大きく持久力が削られるシチュエーションをしっかりと見極めて、適切な方法で持久力を向上させましょう。
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