
カラダづくりの豆知識
WriterQOOL編集部
【プロ監修】筋トレはメンタルも強くする。筋トレで得られる自己効力感とは

今回はプロのパーソナルトレーナー監修のもと、筋トレがメンタルに及ぼす影響を解説。「筋トレをすればメンタルが強くなる」と言われる理由やその真相、加えてメンタル改善に効果的な運動方法もあわせてご紹介します。
今日からさっそく筋トレを始めて、前向きで健康的なメンタルを手に入れていきましょう。
監修者プロフィール

- パーソナルトレーナー宮下 真之
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警察官を経てトレーナーへと転身。大手フィットネスクラブでインストラクターとしてキャリアを重ね、その後は北島康介氏プロデュース「FLUX CONDITIONINGS」の人事育成兼専属パーソナルトレーナーへ。プロゴルファーや力士、アーティストなど様々な著名人を受け持ち、2018年札幌市に『KNOX PERSONAL TRAINING GYM』をオープン。
担当実績
・浜崎あゆみ(アーティスト|2016年専属トレーナー)
・伊沢拓也(プロレーサー|2015年スーパーGT第三位)など
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筋トレでメンタルが強くなると言われる理由をプロが解説
「筋トレはメンタル強化に効果的」。フィットネス界では定説のようになっているトピックスですが、その理由や根拠は媒体により様々。
今回はプロアスリートの指導経験もあるパーソナルトレーナー宮下さんから、筋トレとメンタルの影響についてお話を伺いました。

筋トレとメンタルの影響はよく聞くところですが、実際のところいかがでしょうか?個人的には、筋トレをすると調子がよくなるような実感はあります。

前提として、筋トレさえすれば全てがすべてメンタルが強くなるとは言い切れません。それはプロアスリートにも心を病んでしまう人がいることからも明らかです。
しかし、運動がメンタルに良い影響をもたらすこと自体は研究結果としても発表されています。
うつ病に関する研究結果では、中程度の強度の運動によってメンタルが改善したというデータが多々見つかりました。
さらに宮下さんの指導するジム利用者の方々の傾向を見ても、筋トレをすることで前向きになったり、自分に自信をもてるようになったりするケースが多く見られるそうです。
上記のケースも広い意味では「筋トレでメンタルが強くなった」と言えますが、これには「自己効力感」が大きく影響していると教わりました。

自己効力感とはあまり聞き馴染みのない言葉ですが、自信とは違うものですか?

似たようなものと考えてもらって問題ありません。
その他の事例とあわせて、筋トレなどの運動がメンタルを強くすると言われる理由を3つに分けて解説しますね。
- 筋トレをすると自信がつく(自己効力感が上がる)
- 筋トレで分泌されるホルモンによりポジティブになれる
- 筋トレで分泌されるホルモンにより精神状態が安定する
1. 筋トレをすると自信がつく(自己効力感が上がる)

本格的に筋トレを取り入れてボディメイクを始めてから、体つきが大きく変化して「自信」に繋がった実感があります。
筋トレでメンタルが強くなるといわれる大きな理由の一つは、体つきの変化にあると考えて良いでしょう。
男性ならば筋肥大によって膨らんだ逞しい肉体を、女性であればスラっと引き締まった美しいスタイルを手に入れることで、誰しも自信が持てるようになります。

ジム利用者の方でも、鍛えてスタイルが良くなるにつれて顔つきが変わったり、明らかに自分に自信がもてるようになる方が多くいらっしゃいます。
もう少し専門的な話になると、筋トレが私たちに自己効力感を与える効果があるという研究も見つかりました。
自己効力感とは、心理学者アルバート・バンデューラが唱えた「自分はある行動を実行できると信じられる」という感覚のこと。
自己効力感が人間の機能のなかで中心的な自己規制のメカニズムとして作用することは、多くの研究(Bandura,1997 など)で裏付けられています。

少し難しい内容ですが、筋トレが「成功体験」になるようなことでしょうか?

その通りです。
たとえば「自分は30kgのバーベルを持てる」「腕立て伏せなら10回3セットできる」といった実績や成功体験が「自分はできる人間なんだ」という自己効力感に繋がるイメージですね。
「筋トレができた」という実績が揺るぎない事実として自分の中にでき、それが自信に繋がるのが「筋トレをすればメンタルが強くなる」と言われる理由の一つです。
2. 筋トレで分泌されるホルモンによりポジティブになれる

また、筋トレをすると分泌されるホルモン物質である「テストステロン」と「ノルアドレナリン」も重要です。
いずれもやる気を向上させ、気持ちをポジティブにさせる作用があるとわかっています。
筋トレをして上記ホルモンが分泌されることで「直接的にメンタルが強くなる」とは言い切れないものの、やる気や意欲が向上する効果は期待できます。
つまり「何を言われてもへこたれない」というよりも「もっと人生を楽しもう」という前向きなメンタルにしてくれる効果は得られるでしょう。

テストステロンはよく聞きます。男性ホルモンの一種で、筋肉を増やしたり行動力を上げたりするような役割ですよね?

有名ですよね。筋トレをするとテストステロンが分泌されて、やる気が上がることは間違いありません。
また、運動で交感神経が優位になることでノルアドレナリンが分泌され、その結果「やる気や意欲のアップ」に繋がると言及されている研究結果も見つかります。
つまり「メンタルを強くする」とは断言できないものの、筋トレでテストステロンとノルアドレナリンが分泌されることが「ポジティブさ」に繋がることは間違いありません。
3. 筋トレで分泌されるホルモンにより精神状態が安定する

「セロトニン」と「βエンドルフィン」も筋トレをすることで分泌されますが、これらは気持ちを穏やかにしてくれるホルモンです。
特に「セロトニン」は、足りなくなると精神的に不安定な状態になってしまうほど、メンタルの健康にとって重要な物質と言われます。
冒頭でお伝えした「運動によるうつ病の改善効果」にも、セロトニンが大きく影響しています。
うつ病の人はセロトニンが過剰に少ない状態にあるということがわかっており、運動でセロトニンが分泌されることで改善に繋がったというデータがありました。
もちろんうつ病でない人にとっても、運動や筋トレをしてセロトニンが分泌されることで、ネガティブな気持ちを抑える効果を得られます。

βエンドルフィンはあまり聞いたことがありませんでした。これも重要ですか?

そうですね。主に動物実験のデータにはなりますが、βエンドルフィンとメンタル改善に関する研究結果も多く見つかりました。
運動をするとβエンドルフィンが分泌され、人間や動物に対して気分の快感や平穏をもたらし、不安軽減にも効果があるとされる研究結果が多く見つかります。(Sforzo et al.1986 など)
このことからも、筋トレは気持ちを安定させ、広い意味でメンタルの強化に役立つと言って良いでしょう。
メンタル強化も目指せる、筋肥大に効果的な筋トレのやり方

運動をするとメンタルに好影響であることがよくわかりました。
筋トレをして自信をつけたいという方のために、おすすめの筋トレ法も教えていただけますか?

わかりました。
それではスタイルアップに繋がる「筋肥大」にもっとも効果的と言われている筋トレの方法をお伝えしますね。
効果的な筋トレの方法は日々研究が進んでおり、そのメソッドは様々。
今回は最新の研究のなかで、もっとも筋肥大に効果的とされる筋トレの方法を教わりました。
1セット10回をギリギリこなせる負荷で行う

筋力を上げるには低回数も効果的ですが、体づくりのために筋肉を肥大化させるには「1度に10回できるのが限界」の強度で行うのがベストです。
例えばダンベルカールをする際に「30kgなら1セット5回、20kgなら10回行うのが限界」という人であれば、20kgの重さで10回行うほうが筋肥大には効果的。
もちろん「6回が限界」「20回でギリギリ」という重さでトレーニングを限界まで行えば、筋肥大はします。「1度に10回できるのが限界」というのは、あくまでも分かりやすい基準かつベストなやり方。
とは言えど、何回でもできる軽い重さよりも10回で力を出し切れる重さや負荷に調整した方が筋肥大効果が大きいとされています。
セット間は「2〜3分」休憩して全快させる

休憩は1分間くらいが良いとよく聞きますが、もっと長く取った方が良いということですね?

確かにこれまでは「1分の休憩」が定説でした。
しかし筋肥大を狙うには毎回全力を出し切った方が効果的です。
今は「2分〜3分休憩して、疲労を全快させてから次のセットに臨む」という方法がスタンダードになってきています。
2分休むのがルールというよりも、とにかく「筋肉を十分に回復させる」のが目的です。
自分が次のセットでまた全力を出せる程度の休憩時間を取るようにしましょう。
最低3セット以上繰り返す。理想は5〜6セット

筋トレの効果を最大化するには、5〜6セットがもっとも効果的とされています。
反対に10セットまで繰り返すのは効果がないともされているため、3セット〜6セットを目標にして下さい。
休憩時間を多く取るのは、筋肉を回復させてセット数を増やすためでもあり、毎セットでギリギリ10回こなせるのが理想です。
5セットとなると、それこそメンタルが試されるセット数かもしれません。自分を律して5〜6セット繰り返せるようになれば、十分に筋トレのメンタル強化効果を実感できるのではないでしょうか。

ちなみに、もしも同じ部位を2種目行うなら、1種目のセット数を減らす必要があります。
例えば胸のトレーニングを3種目こなすのに、全て6セットやるのはオーバー気味。3セットに留めておくのがベターです。
今すぐ始められる自宅筋トレメニュー3選
ここでは実際に今すぐ始められる自宅筋トレメニューを3つだけご紹介します。
まずは前項で宮下さんから教わったコツをおさらいしましょう。
- 1セット10回をギリギリこなせる負荷で行う
- セット間は「2〜3分」休憩して全快させる
- 最低3セット以上繰り返す。理想は5〜6セット
重い腰を上げて筋トレを始めることで、ホルモンが分泌されてポジティブになり、やる気がでることは確実です。
さっそくチャレンジしていきましょう。
ワイドプッシュアップ

- うつ伏せになり、両手を肩幅の1.5倍程度の位置につく
- ヒジを曲げ、胸が地面スレスレになるまでおろす
- 腕を伸ばして起き上がり、1〜2の動作を10回×3セット行う
ワイドプッシュアップでは腕や胸の筋肉を鍛えられます。
難しい人は膝をついてもOK。ギリギリ10回できるように、負荷を調整しながらトライしてみてください。
バイシクルクランチ

- 床に仰向けになり、両手は耳の横に添える
- 自転車を漕ぐイメージで両足を動かし、右肘と左膝を付ける
- 反対側も同様に行い、左右交互に繰り返す動作を左右各10回×5セット行う
バイシクルクランチはお腹周り全体を鍛えられるトレーニング。女性はくびれを、男性はシックスパックを手に入れるために必須です。
コツはあくまで「お腹」をねじること。ただ膝と肘をくっつけようと動くと首や背中を痛めやすいため、正しくお腹に負荷をかけていきましょう。
スクワット

- 足を肩幅より少し広めに開いて立ち、両手を体の前で重ねる。
- 斜め後ろにお尻を突き出すイメージで腰を落とす
- 太ももと床が平行になるまで腰を落としたら、ゆっくりと腰をあげる
- 2〜3の動作を10回×5セット行う
スクワットは下半身全体を鍛えられるトレーニングです。代謝もアップし、ダイエットにも効果的。10回では負荷がたりない場合は、ダンベルを持って負荷をプラスしても良いでしょう。
膝ではなく太ももに刺激がはいるよう、使っている筋肉部位はつねに意識しながらトライしてください。
さらに本格的に筋トレを続けていきたい方は、今回教わった宮下さんに同様に監修いただいた下記の記事もあわせて参考にしてみて下さい。
筋トレが難しい女性は軽めの運動でもOK
ここまで宮下さんから「筋トレ」に関するお話を伺ってきましたが、冒頭でもお伝えした通り中程度の運動でもメンタル改善効果は得られます。
最後にQOOLがチョイスした「筋トレまではしたくない」という女性でも簡単に始められる運動をご紹介。さっそく見ていきましょう。
- エアロバイク(有酸素運動)
- ヨガ
- ダンス
- キックボクシング

もちろん男性もOKです。ぜひチャレンジしてみて下さい。
エアロバイク(有酸素運動)
有酸素運動といえば、誰もが思い浮かべる種目はジョギングやウォーキング。
しかし天候に左右されることや、地面によっては膝に負担がかかってしまうことから、エアロバイクや自転車によるサイクリング運動をおすすめします。
サイクリング運動は関節に負荷がかかりにくく、消費カロリーはランニングと比べて実に1.3倍。メンタルを改善するついでにダイエットもできて一石二鳥です。

現在の体重にもよりますが、毎日30分、1ヶ月間漕ぐことでウエストが1cm程度も細くなるくらいのカロリー消費の期待できる運動です。
下記の記事も参考にしていただいて、ぜひチャレンジしてみて下さい。
ヨガ
心身鍛錬の方法として発展したヨガは、メンタルを安定させるのに最適。
基礎代謝を上げつつリラックス効果までも得られるエクササイズとして、ミランダ・カーやエマ・ワトソンなど多くの海外セレブにも愛されています。
「冷え性改善」や「ウエストの引き締め効果」があるポーズなど、女性に嬉しいメリットを得やすいのも嬉しいポイント。
昔はスクールに通わなければ習えなかったヨガですが、今は自宅でオンラインで学べるサービスも沢山リリースされています。
オンラインヨガに興味があれば、下記の記事も合わせてチェックしてみて下さい。
ダンス
SNSやYouTubeでも人気のダンス。全身を使った運動で筋肉を効率良く動かし、楽しくダイエットできる優れたエクササイズです。
大好きなアーティストの曲をBGMに踊れば、運動嫌いな人でも自然とエクササイズを続けられるはず。
一人で始めるにはよくわからない……という方は、まずはYouTubeのダンスレッスン動画から始めてみて下さい。
どの動画を見れば良いかわからない場合は、下記の記事でご紹介する「リーンボディ」という動画レッスンサービスのダンスレッスンもおすすめです。
キックボクシング
ストレス発散にもなると女性に話題のエクササイズが「キックボクシング」。さまざまなジムのフィットネスクラスに登場している人気トレーニングです。
正しい方法で行えば30分で202kcal(おにぎり1個分程度)、1時間行えば403kcal(カップラーメン1個程度)のカロリーが消費できるとも言われており、ダイエットにも効果的。
下記の記事では自宅でキックボクシングを始める方法を0から解説しています。ぜひ参考にしてみて下さい。
さっそく筋トレを始めてメンタルを強くしよう
今回はプロのパーソナルトレーナーである宮下さんに、筋トレでメンタルが強くなると言われる理由や効果的な方法を教えていただきました。
筋トレがメンタルへ及ぼす影響でもっとも実感しやすいことは、やはり筋トレによって得られる「自信」や「自己効力感」です。

腕立て伏せをできる回数が前回よりも増えたり実際に体つきが変わったりすることで自信がつき、性格が明るくなるのはイメージしやすいメリットです。
また自分ひとりでは筋トレを続けられないという方は、今回監修いただいた宮下さんのようなパーソナルトレーナーから教わるのもおすすめ。
下記の記事では、宮下さんから「パーソナルトレーニングの基礎知識」から解説していただいています。ぜひ一度参考にしていただき、筋トレを続けて健康なメンタルを手に入れていきましょう。